温経湯(うんけいとう)

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 本題の温経湯(うんけいとう)の詳細な中医学的効能は、四川科学技術出版社発行の『中医方剤与治法』中の陳潮祖先生の解説を抜粋した拙訳があるので、下記に引用させて頂く。         
六,補虚袪瘀法

 補虚袪瘀法は,瘀滞偏虚の病機にもとづいて考案された治法である。
 瘀血の病変は,もともと実証に属するが,血瘀が遷延すると気血が日に日に虧損されて,正虚邪実の病理機序に転化することがある。血液が脉中を運行できるのは,心気の推動によるものであるから,心気が虚損すれば推動力が衰えて血液の運行が不暢となり,正虚邪実の証を形成する。逆に,血脉瘀阻があれば,長い期間には心気の正常な活動に悪影響を及ぼし,心気不足を誘発して正虚邪実の証を形成する。肝血瘀阻においては,肝木が脾土を疏泄できないために脾が健運できなくなって気虚血瘀の証を形成する状況は,最もよくみられる。瘀血阻滞では血虚を伴うことが多い。瘀血が去らなければ新血が生じにくく,新血が生じなければおのずと血虚となるので,時間の経過とともに次第に血虚兼血瘀の病理機序を形成する。
 正虚は補い邪実は攻めるべきであるから,正虚邪実の証型では,補虚するだけで袪瘀しなければ瘀血を除去できず,袪瘀するだけで扶正しなければ正気を保持することができない。それゆえ,本法では補気の人参・黄耆や補血の当帰・白芍などと活血薬を配合し,攻補兼施の方剤を組み立てる。補虚は扶正のためであり,袪瘀は袪邪の意義があり,扶正と袪邪によって治療することができるのである。このような攻補兼施の構成をとった方剤は古方にも多くみられる。
 〈方剤例〉 血府逐瘀湯(補血の四物湯を基礎としている)・温経湯(補気の人参・甘草と補血の当帰・白芍・阿膠が配合されている)。

          温経湯(『金匱要略』)

 【組成】 呉茱萸 桂枝 当帰 白芍 川芎 牡丹皮 人参 甘草 阿膠 麦門冬 半夏 生姜
 【用法】 水煎服用。
 【主治】 衝任虚寒・瘀血阻滞による月経不順・月経遅延・下腹部の冷痛・唇口の乾燥・手掌煩熱,あるいは不妊症,あるいは月経が止まらないなど。
 【分析】 月経と衝任は密接な関連があり,月経周期が短いものは熱証に属することが多く,周期が長いものは寒証が多い。それゆえ,本証では月経周期が長くて下腹部の冷痛を伴うので,衝任虚寒によって生じるものであることがわかる。下腹部冷痛の原因は,胞宮虚寒と瘀血阻滞の二種類であり,瘀血が去らなければ新血が生じにくく,新血が生じなければ血虚発熱を生じるため,唇口乾燥・手掌煩熱を生じる。不妊症は胞宮虚寒が原因である。
 【病機】 衝任虚寒・瘀血阻滞
 【治法】 温経補虚・活血行瘀
 【方意】 衝任虚寒に対しては温経散寒と気血の補養を行い,瘀血阻滞による月経不順に対しては活血行瘀を施すべきである。温経袪瘀の措置によって散寒袪瘀すれば,月経はおのずと調う。温経散寒の呉茱萸・桂枝のうち,呉茱萸は行気止痛に優れ,桂枝は温通血脉に長じているので,気滞血瘀で寒凝による腹痛の症状に対し,優れた効果がある。これらに,補血滋陰の当帰・芍薬・阿膠・麦門冬と益気和胃の人参・甘草・半夏・生姜による気血生化の源を滋補する薬物を加えると,温経補虚の効を発揮する。さらに,川芎・牡丹皮は桂枝の活血行瘀に協力し,牡丹皮は虚熱も清するので,これらによって袪瘀生新させると,唇口乾燥の症状が除かれ,虚熱を清することによって手掌の煩熱なども解消する。
 方中の桂枝・牡丹皮には良好な活血行瘀の作用があるが,桂枝の性は温であるから寒証に適し,牡丹皮の性は寒であるから熱証に適しており,両者を併用すれば活血作用が増強されるのと同時に,寒熱の偏りがなくなり相反相成の威力を発揮するので,仲景の方剤中に併用されていることが多い。本方においては,桂枝によって下寒を温め,牡丹皮によって浮熱を清し,寒熱併用が矛盾することなく両立するこの種の用薬方法は,熟考する価値がある。
 【応用】 本方は月経不順や月経痛に有効である。下腹部の冷痛が甚だしいときは小茴香・艾葉を加えて温経散寒の効能を増強し,月経時あるいは月経前に下腹部が脹痛するときは香附子・烏薬を加えて行気止痛し,淡色の子宮出血が続くときは牡丹皮を去り,炮姜・艾葉・熟地黄を加えて温経・補血・止血し,気虚が甚だしいときは黄耆を加えて益気する。
 【加減方】
 局方温経湯
 [成分] 桂枝・当帰・白芍・川芎・牡丹皮・人参・甘草・莪朮・牛膝。 
 [主治] 温経湯と同様であるが,温補の効能が弱く活血袪瘀の効能が強くなっているので,瘀滞が顕著なときに適している。

                            (陳潮祖)

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by m-kanpo | 2006-05-19 16:38 | 漢方処方
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