藿香正気散  (かっこうしょうきさん)                 (カッコウショウキサン)

 梅雨から夏にかけて湿邪に侵犯される機会が増大するので、しばらく大活躍しそうな藿香正気散。
 これは漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記:藿香正気散(かっこうしょうきさん)でも取上げている。

 また冬場でも意外に使用する機会が多いが、冬場の藿香正気散が参考になる。
 
 ところで、大分以前に陳潮祖先生のご高著『中医方剤与治法』の中の藿香正気散の方剤解説を訳注と補足を行ったものがあったので、その一部を引用させて頂く。
     藿香正気散(『和剤局方』)

 【成分】 藿香 紫蘇 白芷 桔梗 陳皮 厚朴 大腹皮 半夏 白朮 茯苓 生姜 大棗 甘草
 【用法】 丸剤・散剤・合剤・湯剤のいずれでもよい。
 【主治】 外感風寒・内傷湿滞による悪寒・発熱・頭が重く脹って痛い・胸膈痞悶〔胸膈部が痞えて苦しい〕・嘔吐・泄瀉〔下痢〕・舌苔は膩・脉は濡など。
 【分析】 病機は風寒外感・湿滞内停である。悪寒・発熱・頭痛は表証を示すもので,頭痛して重いのは表邪挟湿による症状である。寒邪外束により湿邪が三焦で鬱滞し,胃腸を内犯して脾の運化機能が失調し湿濁中阻〔湿濁が中焦に阻滞〕するために胸痞・腹脹し,昇降が失調するために嘔吐・下痢が現われる。
 【病機】 風寒外感・湿滞内停
 【治法】 芳香化濁・昇清降濁
 【方意】 本方は芳香化湿・昇清降濁・扶正袪邪・表裏双解など,数種類の治法を併用した方剤である。
 辛温の藿香は,理気和中・化湿止嘔・外散表邪・内化湿濁して表裏を兼治する作用があり,本方の主薬である。散寒利膈の紫蘇・白芷・桔梗を加えて表邪を解散し,利気・行水・消満の厚朴・大腹皮と,降逆・燥湿・運脾の陳皮・半夏を加えて裏滞を疏通する。また,紫蘇・白芷・陳皮・厚朴の芳香の性味は湿濁を化して脾気を醒する作用を増強し,以上の7味が補助薬となる。
 湿濁と不正の邪気が人体を傷害する誘因は,中気不足によって脾が健運できないからである。それゆえ,健脾袪湿・扶助正気の茯苓・白朮・甘草を加えて佐薬としている。
 方中には,藿香・紫蘇・白芷などの解表薬とともに厚朴・大腹皮などの疏裏の薬物の配合による表裏双解法が,紫蘇・白芷・桔梗などの昇清薬とともに茯苓・半夏・大腹皮などの降濁薬の配合による昇清降濁法が,紫蘇・白芷・桔梗などの上焦を開宣する薬物とともに紫蘇・白芷・陳皮・半夏などの中焦を燥湿する薬物,茯苓・大腹皮などの下焦を通調する薬物の配合による三焦同治法が,藿香・白芷・陳皮・紫蘇などの芳香化湿薬による袪邪とともに茯苓・白朮・甘草などの脾胃を健運する薬物による扶正の配合で扶正袪邪法が,それぞれに体現されている。このような配慮の行き届いた配合がなされており,表裏同治によって悪寒・発熱・脹満などが消退し,昇降機能の回復により嘔吐・下痢が止まり,三焦の機能が回復するので水液は調整され,邪気の除去によって正気は回復し,正気の回復によって邪気を防御できる。それゆえ,上述の症候に的確に対応できるのである。
 【応用】
 (1)本方の用途は広いが,つまるところは寒湿の病変に対する方剤である。表証を兼ねるときにも用いられるが,表証がないときに使用されることが多い。この種の疾病は,果物や生冷物の過食によって脾陽を損傷し,脾が湿を健運できずに湿濁が中焦に阻滞するために,胸痞・腹脹・嘔吐・泄瀉などを生じることが多く,本方により芳香化濁すれば,すぐれた治療効果が得られる。
 (2)芳香化湿薬の選択に注目すべきで,本方の学習を通じて芳香化湿法に対する一定の認識が得られるはずである。一つの薬物で多種の用途を果たす選薬方法は,大いに注目に値する。
 (3)本方は急性胃腸炎,および夏期の感冒や中暑による発熱・頭痛・悪心・嘔吐・下痢・腹痛などの症状に用いられる。

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by m-kanpo | 2006-05-30 00:00 | 漢方処方
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