茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)

 茵蔯蒿湯の漢字も一部のブログでは漢字が反映されない。そこで、今回も本ブログを文献の貯蔵庫として利用。

 この茵蔯蒿湯については、すでにブログ漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記でも取り上げているが、ここでは中医方剤学上における茵蔯蒿湯の基礎知識を取り上げたい。

 本方の日本における一般漢方製剤としての効能・効果は、
 口渇があり、尿量少なく、便秘するものの次の諸症;じんましん、口内炎
 となっている。

 ところで本場中国の中医方剤学では、どのような方剤として考えられているかを知っておくことは専門家としては絶対に不可欠なことであるから、中医方剤与治法(四川科学技術出版社)より拙訳で引用する。

茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)≪傷寒論≫

 【組成】 茵蔯  梔子  大黄

 【用法】 水煎し,1日1剤,数剤を連続服用する。

 【主治】 湿熱による黄疸でミカンのような鮮黄色・軽度の腹部膨満感・口渇・舌苔は黄膩・尿量の減少・脉は沈実あるいは滑数。

 【分析】 黄疸には陰黄と陽黄の違いがあり,陽黄は熱に属し,陰黄は寒に属す。陰黄の証では不鮮明で暗い黄疸・唇が淡紅・口中に異常がない・大便が固まらない・脉は遅で微弱であるが,陽黄の証ではミカンのように鮮明な黄疸・腹満・大小便の減少・舌苔は黄膩・脉は沈実あるいは滑数である。本方証は陽黄で熱邪が湿邪よりも重い証型に属する。時疫の邪は口から侵入し,脾胃に客して脾胃の運化機能と肝胆の疏泄機能が失調し,湿邪は停留し熱邪は鬱滞し,湿熱交蒸して外越することも下泄することもできず,熱邪は湿邪の阻遏によってますます盛んになり,湿邪は熱邪に蒸騰されてますます横たわり,少陽に湿熱の壅滞を生じて胆液が熱邪のために漏泄し,肌膚に侵入して黄疸を呈し,身体および目がともに黄色に染まるのである。

 【病機】 湿熱黄疸・熱重於湿

 【治法】 清熱除湿・利胆退黄

 【方意】 本方は黄疸に対する名方である。茵蔯は黄疸に対する主要薬物であり,清熱利湿の効能だけでなく肝胆の解鬱と利胆退黄の効能がある。山梔子を配合すると茵蔯に協力して肝胆の熱邪を三焦を通じて下行せしめ,清熱・利胆・退黄の作用を増強する。苦寒の大黄は瀉熱通腑により,腑気を通暢して湿熱を除去するので黄疸はおのずと消失する。わずか三味の薬物であるが,薬力があり効能も広く,清熱除湿・利胆退黄の作用をよく発揮する。

 方中の大黄には苦寒清熱・利胆通腑・活血行瘀の効能があり,清熱作用を通じて茵蔯・山梔子の清熱解毒作用を増強し,利胆通腑の作用を通じて胆管および腸管を通暢するので,胆汁を正常に腸管に下輸して黄疸が消退するのを助けることができる。また,大黄の活血行瘀の作用を通じて肝の蔵血機能に関与し,血流を通暢せしめるので肝は比較的早く回復し,大きな後遺症を生じない。このように,大黄の作用は無視できないものがある。

 【応用】 近年,本方は主として各種原因によって誘発された湿熱黄疸の治療に用いられている。本方が適応する基本徴候は,眼の強膜の黄染・皮膚の発黄・ミカンのような鮮黄色・茶色の小便・口渇・軽度の腹部膨満・舌質は紅・舌苔は黄膩・脉は滑で有力などである。
 臨床上,以上の症候がみられる急性伝染性黄疸型肝炎・胆嚢炎や胆石症に伴う黄疸にも随症加減して応用する。

 【加減方】
 (1)梔子柏皮湯〔『傷寒論』〕
 [組成] 山梔子 黄柏 甘草
 [用法] 水煎して温服。
 [主治] 身体の熱感・発黄・衄血。
 (2)梔子大黄湯〔『金匱要略』〕
 [組成] 山梔子 大黄 枳実 豆鼓
 [用法] 水煎して温服。
 [主治] 酒黄疸〔飲酒過度による黄疸〕。
 (3)大黄芒硝湯〔『金匱要略』〕
 [組成] 大黄 黄柏 硝石 山梔子
 [用法] 水煎し(煎じ終えた後に硝石を入れる),頓服。
 [用法] 黄疸・腹満・尿量が減少して濃い・自汗。

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by m-kanpo | 2006-08-28 00:44 | 漢方処方
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