カテゴリ:漢方処方( 8 )

芎帰調血飲 と 芎帰調血飲第一加減

 芎帰調血飲 と 芎帰調血飲第一加減 では、断然後者の方が応用範囲が広く、とても重宝な方剤である。

芎帰調血飲 の処方内容は、

当帰 川芎 地黄 白朮 茯苓 陳皮 香附子 牡丹皮 大棗 乾姜 甘草 鳥薬 益母草


芎帰調血飲第一加減 は、上記の薬味にさらに、
白芍薬 桃仁 紅花 牛膝 枳殻 木香 延胡索 肉桂 が加わっている。それゆえ、応用範囲は抜群に広く、たとえばこれに丹参が加われば、小生が製品開発を指導したウチダ和漢薬の「生薬製剤二号方」の薬味がすべて含まれることになる。

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by m-kanpo | 2007-02-18 08:11 | 漢方処方

呉茱茰湯(ゴシュユトウ)の覚え書き

 呉茱茰湯(ごしゅゆとう)の効能は、市販される医薬品としての漢方エキス製剤においては、

 みぞおちが膨満して、手足が冷えるものの次の諸症: 頭痛、頭痛に伴うはきけ、しゃっくり

と、かなり的確である。これを中医学的にはどのような方剤として捉えられているか、四川科学技術出版社発行の『中医方剤与治法』から、一部を拙訳にて以下に御紹介する。
  呉茱萸湯(《傷寒論》)

 【薬物構成】 呉茱萸 生姜 人参 大棗
 【用法】 水煎し、三回に分けて服用。
 【主治】 肝胃虚寒による乾嘔・よだれや唾が多い・頭頂部痛・胃脘部や腹部の疼痛・舌質が淡・舌苔は白滑・脉は弦遅。
 【分析】 頭頂部痛・胃脘部や腹部の疼痛・嘔吐が本方の主症で、病機は肝胃虚寒である。舌質が淡・舌苔が白・脉が遅などは虚寒証の反映である。足厥陰肝経の経脉と督脉は頭頂で会するので、頭頂部の疼痛は厥陰肝経の病であり、胃脘部や腹部の疼痛・悪心・嘔吐などは陽明胃腑の病である。それゆえ、臓腑経絡弁証によれば病変部位は肝胃と確定できる。舌質が淡・舌苔が白・脉が遅などは虚寒の徴候であるから、八綱弁証によると病性は虚寒に属すると確定される。このように、頭頂部の疼痛・胃脘部や腹部の疼痛・嘔吐は、肝胃虚寒・濁陰上逆によって生じるのである。
 【病機】 肝胃虚寒・濁陰上逆。
 【治法】 温中降逆法。
 【方意】 苦・辛・大熱の呉茱萸は温肝の主薬で、とりわけ温胃散寒・降逆止嘔の重要薬物であるから、厥陰の頭痛・陽明の嘔吐で虚寒証に属するものに止嘔・止痛作用がある。生姜は呉茱萸の温胃降逆作用を助け、人参・大棗は補虚安中するもので、これらによって温中降逆の方剤となる。
 《金匱翼》に「内生の寒、温に必ず補を兼ぬ」とあり、本方が治す肝胃虚寒は肝胃自身の陽虚で、当帰四逆湯証の外寒内犯による場合とは一定の違いがある。それゆえ、当帰四逆湯証では温散、本方では温補を重視し、意義内容が異なるので注意を要する。
 【応用】
 1.《聖済総録》に、人参湯(呉茱萸湯のこと)は「心痛を治す」とある。本方は十二指腸潰瘍に有効であることから、ここでいう心痛とは胃脘部の疼痛を指すものと思われる。
 2.《方函口訣》には「此ノ方ハ濁飲ヲ下降スルヲ主トス。故ニ涎末ヲ吐スルヲ治シ、頭痛ヲ治シ、食穀欲嘔ヲ治シ、煩躁吐逆ヲ治ス。『肘后』ニテハ吐醋嘈雑ヲ治シ、後世ニテハ噦逆ヲ治ス。凡ソ危篤の症、濁飲ノ上溢ヲ審ラカニシテ此ノ方ヲ処スルトキハ、其ノ効挙ゲテ数ヘガタシ。・・・・・・・久腹痛、水穀ヲ吐スル者、此ノ方ニ沈香ヲ加ヘテ効アリ。又、霍乱後、転筋ニ、木瓜ヲ加ヘ大イニ効アリ」とある。

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by m-kanpo | 2006-09-10 12:28 | 漢方処方

茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)

 茵蔯蒿湯の漢字も一部のブログでは漢字が反映されない。そこで、今回も本ブログを文献の貯蔵庫として利用。

 この茵蔯蒿湯については、すでにブログ漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記でも取り上げているが、ここでは中医方剤学上における茵蔯蒿湯の基礎知識を取り上げたい。

 本方の日本における一般漢方製剤としての効能・効果は、
 口渇があり、尿量少なく、便秘するものの次の諸症;じんましん、口内炎
 となっている。

 ところで本場中国の中医方剤学では、どのような方剤として考えられているかを知っておくことは専門家としては絶対に不可欠なことであるから、中医方剤与治法(四川科学技術出版社)より拙訳で引用する。

茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)≪傷寒論≫

 【組成】 茵蔯  梔子  大黄

 【用法】 水煎し,1日1剤,数剤を連続服用する。

 【主治】 湿熱による黄疸でミカンのような鮮黄色・軽度の腹部膨満感・口渇・舌苔は黄膩・尿量の減少・脉は沈実あるいは滑数。

 【分析】 黄疸には陰黄と陽黄の違いがあり,陽黄は熱に属し,陰黄は寒に属す。陰黄の証では不鮮明で暗い黄疸・唇が淡紅・口中に異常がない・大便が固まらない・脉は遅で微弱であるが,陽黄の証ではミカンのように鮮明な黄疸・腹満・大小便の減少・舌苔は黄膩・脉は沈実あるいは滑数である。本方証は陽黄で熱邪が湿邪よりも重い証型に属する。時疫の邪は口から侵入し,脾胃に客して脾胃の運化機能と肝胆の疏泄機能が失調し,湿邪は停留し熱邪は鬱滞し,湿熱交蒸して外越することも下泄することもできず,熱邪は湿邪の阻遏によってますます盛んになり,湿邪は熱邪に蒸騰されてますます横たわり,少陽に湿熱の壅滞を生じて胆液が熱邪のために漏泄し,肌膚に侵入して黄疸を呈し,身体および目がともに黄色に染まるのである。

 【病機】 湿熱黄疸・熱重於湿

 【治法】 清熱除湿・利胆退黄

 【方意】 本方は黄疸に対する名方である。茵蔯は黄疸に対する主要薬物であり,清熱利湿の効能だけでなく肝胆の解鬱と利胆退黄の効能がある。山梔子を配合すると茵蔯に協力して肝胆の熱邪を三焦を通じて下行せしめ,清熱・利胆・退黄の作用を増強する。苦寒の大黄は瀉熱通腑により,腑気を通暢して湿熱を除去するので黄疸はおのずと消失する。わずか三味の薬物であるが,薬力があり効能も広く,清熱除湿・利胆退黄の作用をよく発揮する。

 方中の大黄には苦寒清熱・利胆通腑・活血行瘀の効能があり,清熱作用を通じて茵蔯・山梔子の清熱解毒作用を増強し,利胆通腑の作用を通じて胆管および腸管を通暢するので,胆汁を正常に腸管に下輸して黄疸が消退するのを助けることができる。また,大黄の活血行瘀の作用を通じて肝の蔵血機能に関与し,血流を通暢せしめるので肝は比較的早く回復し,大きな後遺症を生じない。このように,大黄の作用は無視できないものがある。

 【応用】 近年,本方は主として各種原因によって誘発された湿熱黄疸の治療に用いられている。本方が適応する基本徴候は,眼の強膜の黄染・皮膚の発黄・ミカンのような鮮黄色・茶色の小便・口渇・軽度の腹部膨満・舌質は紅・舌苔は黄膩・脉は滑で有力などである。
 臨床上,以上の症候がみられる急性伝染性黄疸型肝炎・胆嚢炎や胆石症に伴う黄疸にも随症加減して応用する。

 【加減方】
 (1)梔子柏皮湯〔『傷寒論』〕
 [組成] 山梔子 黄柏 甘草
 [用法] 水煎して温服。
 [主治] 身体の熱感・発黄・衄血。
 (2)梔子大黄湯〔『金匱要略』〕
 [組成] 山梔子 大黄 枳実 豆鼓
 [用法] 水煎して温服。
 [主治] 酒黄疸〔飲酒過度による黄疸〕。
 (3)大黄芒硝湯〔『金匱要略』〕
 [組成] 大黄 黄柏 硝石 山梔子
 [用法] 水煎し(煎じ終えた後に硝石を入れる),頓服。
 [用法] 黄疸・腹満・尿量が減少して濃い・自汗。

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by m-kanpo | 2006-08-28 00:44 | 漢方処方

古今録験続命湯 (ぞくめいとう) 中医方剤学文献

   古今録験続命湯(《千金方》)

 【組成】 麻黄(去節) 肉桂 杏仁(皮と先端部および双仁を除く) 炙甘草 当帰 川芎 人参 乾姜 石膏(砕いて綿に裹む)
 【用法】 水煎服用。3回に分服し、1回の服用で汗が出れば癒える。発汗がなければ再服する。風に当たらないようにする。
 【病機】 営衛空虚・風中腠理。
 【治法】 扶正袪風・調和営衛。
 【適応証】
 (1)中風痱による身体の運動機能の麻痺・言語障害・意識朦朧・知覚麻痺・あるいは筋肉がひきつって寝返りができないなど。
 (2)仰臥できずに起坐呼吸・咳逆上気による呼吸困難・顔面の浮腫。



    以上は中医学的文献:陳潮祖著「中医病機治法学」より

続命湯の使用時期についての参考文献としては
    続命湯を代表とする外中風邪と脳血管障害の関係

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by m-kanpo | 2006-06-12 00:40 | 漢方処方

香薷散 (こうじゅさん)




香薷散 (こうじゅさん) 《和剤局方》

 【組成】 香薷 白扁豆 厚朴。
 【用法】 水煎し3回に分けて冷服。
 【病機】 感受寒湿・表裏同病。
 【治法】 除湿解表。
 【適応証】 夏季に納涼・飲冷したために寒湿を感受して陽気が陰邪〔寒湿〕に侵襲され、皮膚が蒸されるような熱感・畏寒〔寒がる〕・頭重・頭痛・無汗・腹痛・吐き下し〔嘔吐・下痢〕・舌苔は白・脉は濡など。

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by m-kanpo | 2006-06-06 09:34 | 漢方処方

防已黄耆湯 (ぼういおうぎとう・ボウイオウギトウ)

 日本の防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)の配合薬物は、防已(ぼうい)に温性のオオツズラフジにあてているため、方剤全体が温補に偏ってしまっている。このオオツズラフジは、中国では清風藤(せいふうとう)と呼び、寒性の漢防已とは別物である。
 このため、本方剤を変形性膝関節炎には、昔ほど有効ではなくなったようだ。
数十年前までは、患部の冷えを訴える人が多かったので、変形性膝関節炎などに優れた効果を発揮していたものだが、近年、患部に熱感を感じる人が断然多くなっているために、本方単独では無効なことが多い。
 従って、本方剤に地竜や石膏を加えるなど、寒熱に配慮した工夫が不可欠となる。


防已黄耆湯



 このように、日本の防已黄耆湯は、中国における防已黄耆湯とは異なることを認識しておく必要がある。
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by m-kanpo | 2006-06-02 14:05 | 漢方処方

藿香正気散  (かっこうしょうきさん)                 (カッコウショウキサン)

 梅雨から夏にかけて湿邪に侵犯される機会が増大するので、しばらく大活躍しそうな藿香正気散。
 これは漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記:藿香正気散(かっこうしょうきさん)でも取上げている。

 また冬場でも意外に使用する機会が多いが、冬場の藿香正気散が参考になる。
 
 ところで、大分以前に陳潮祖先生のご高著『中医方剤与治法』の中の藿香正気散の方剤解説を訳注と補足を行ったものがあったので、その一部を引用させて頂く。
     藿香正気散(『和剤局方』)

 【成分】 藿香 紫蘇 白芷 桔梗 陳皮 厚朴 大腹皮 半夏 白朮 茯苓 生姜 大棗 甘草
 【用法】 丸剤・散剤・合剤・湯剤のいずれでもよい。
 【主治】 外感風寒・内傷湿滞による悪寒・発熱・頭が重く脹って痛い・胸膈痞悶〔胸膈部が痞えて苦しい〕・嘔吐・泄瀉〔下痢〕・舌苔は膩・脉は濡など。
 【分析】 病機は風寒外感・湿滞内停である。悪寒・発熱・頭痛は表証を示すもので,頭痛して重いのは表邪挟湿による症状である。寒邪外束により湿邪が三焦で鬱滞し,胃腸を内犯して脾の運化機能が失調し湿濁中阻〔湿濁が中焦に阻滞〕するために胸痞・腹脹し,昇降が失調するために嘔吐・下痢が現われる。
 【病機】 風寒外感・湿滞内停
 【治法】 芳香化濁・昇清降濁
 【方意】 本方は芳香化湿・昇清降濁・扶正袪邪・表裏双解など,数種類の治法を併用した方剤である。
 辛温の藿香は,理気和中・化湿止嘔・外散表邪・内化湿濁して表裏を兼治する作用があり,本方の主薬である。散寒利膈の紫蘇・白芷・桔梗を加えて表邪を解散し,利気・行水・消満の厚朴・大腹皮と,降逆・燥湿・運脾の陳皮・半夏を加えて裏滞を疏通する。また,紫蘇・白芷・陳皮・厚朴の芳香の性味は湿濁を化して脾気を醒する作用を増強し,以上の7味が補助薬となる。
 湿濁と不正の邪気が人体を傷害する誘因は,中気不足によって脾が健運できないからである。それゆえ,健脾袪湿・扶助正気の茯苓・白朮・甘草を加えて佐薬としている。
 方中には,藿香・紫蘇・白芷などの解表薬とともに厚朴・大腹皮などの疏裏の薬物の配合による表裏双解法が,紫蘇・白芷・桔梗などの昇清薬とともに茯苓・半夏・大腹皮などの降濁薬の配合による昇清降濁法が,紫蘇・白芷・桔梗などの上焦を開宣する薬物とともに紫蘇・白芷・陳皮・半夏などの中焦を燥湿する薬物,茯苓・大腹皮などの下焦を通調する薬物の配合による三焦同治法が,藿香・白芷・陳皮・紫蘇などの芳香化湿薬による袪邪とともに茯苓・白朮・甘草などの脾胃を健運する薬物による扶正の配合で扶正袪邪法が,それぞれに体現されている。このような配慮の行き届いた配合がなされており,表裏同治によって悪寒・発熱・脹満などが消退し,昇降機能の回復により嘔吐・下痢が止まり,三焦の機能が回復するので水液は調整され,邪気の除去によって正気は回復し,正気の回復によって邪気を防御できる。それゆえ,上述の症候に的確に対応できるのである。
 【応用】
 (1)本方の用途は広いが,つまるところは寒湿の病変に対する方剤である。表証を兼ねるときにも用いられるが,表証がないときに使用されることが多い。この種の疾病は,果物や生冷物の過食によって脾陽を損傷し,脾が湿を健運できずに湿濁が中焦に阻滞するために,胸痞・腹脹・嘔吐・泄瀉などを生じることが多く,本方により芳香化濁すれば,すぐれた治療効果が得られる。
 (2)芳香化湿薬の選択に注目すべきで,本方の学習を通じて芳香化湿法に対する一定の認識が得られるはずである。一つの薬物で多種の用途を果たす選薬方法は,大いに注目に値する。
 (3)本方は急性胃腸炎,および夏期の感冒や中暑による発熱・頭痛・悪心・嘔吐・下痢・腹痛などの症状に用いられる。

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by m-kanpo | 2006-05-30 00:00 | 漢方処方

温経湯(うんけいとう)

 高性能のシーザーブログさんでは、残念ながら旧漢字類を使用できないが、幸いエキサイトブログさんではそれが可能なので、シーザーブログさんで継続中のブログの補助に、本ブログを利用させてもらう。

 本題の温経湯(うんけいとう)の詳細な中医学的効能は、四川科学技術出版社発行の『中医方剤与治法』中の陳潮祖先生の解説を抜粋した拙訳があるので、下記に引用させて頂く。         
六,補虚袪瘀法

 補虚袪瘀法は,瘀滞偏虚の病機にもとづいて考案された治法である。
 瘀血の病変は,もともと実証に属するが,血瘀が遷延すると気血が日に日に虧損されて,正虚邪実の病理機序に転化することがある。血液が脉中を運行できるのは,心気の推動によるものであるから,心気が虚損すれば推動力が衰えて血液の運行が不暢となり,正虚邪実の証を形成する。逆に,血脉瘀阻があれば,長い期間には心気の正常な活動に悪影響を及ぼし,心気不足を誘発して正虚邪実の証を形成する。肝血瘀阻においては,肝木が脾土を疏泄できないために脾が健運できなくなって気虚血瘀の証を形成する状況は,最もよくみられる。瘀血阻滞では血虚を伴うことが多い。瘀血が去らなければ新血が生じにくく,新血が生じなければおのずと血虚となるので,時間の経過とともに次第に血虚兼血瘀の病理機序を形成する。
 正虚は補い邪実は攻めるべきであるから,正虚邪実の証型では,補虚するだけで袪瘀しなければ瘀血を除去できず,袪瘀するだけで扶正しなければ正気を保持することができない。それゆえ,本法では補気の人参・黄耆や補血の当帰・白芍などと活血薬を配合し,攻補兼施の方剤を組み立てる。補虚は扶正のためであり,袪瘀は袪邪の意義があり,扶正と袪邪によって治療することができるのである。このような攻補兼施の構成をとった方剤は古方にも多くみられる。
 〈方剤例〉 血府逐瘀湯(補血の四物湯を基礎としている)・温経湯(補気の人参・甘草と補血の当帰・白芍・阿膠が配合されている)。

          温経湯(『金匱要略』)

 【組成】 呉茱萸 桂枝 当帰 白芍 川芎 牡丹皮 人参 甘草 阿膠 麦門冬 半夏 生姜
 【用法】 水煎服用。
 【主治】 衝任虚寒・瘀血阻滞による月経不順・月経遅延・下腹部の冷痛・唇口の乾燥・手掌煩熱,あるいは不妊症,あるいは月経が止まらないなど。
 【分析】 月経と衝任は密接な関連があり,月経周期が短いものは熱証に属することが多く,周期が長いものは寒証が多い。それゆえ,本証では月経周期が長くて下腹部の冷痛を伴うので,衝任虚寒によって生じるものであることがわかる。下腹部冷痛の原因は,胞宮虚寒と瘀血阻滞の二種類であり,瘀血が去らなければ新血が生じにくく,新血が生じなければ血虚発熱を生じるため,唇口乾燥・手掌煩熱を生じる。不妊症は胞宮虚寒が原因である。
 【病機】 衝任虚寒・瘀血阻滞
 【治法】 温経補虚・活血行瘀
 【方意】 衝任虚寒に対しては温経散寒と気血の補養を行い,瘀血阻滞による月経不順に対しては活血行瘀を施すべきである。温経袪瘀の措置によって散寒袪瘀すれば,月経はおのずと調う。温経散寒の呉茱萸・桂枝のうち,呉茱萸は行気止痛に優れ,桂枝は温通血脉に長じているので,気滞血瘀で寒凝による腹痛の症状に対し,優れた効果がある。これらに,補血滋陰の当帰・芍薬・阿膠・麦門冬と益気和胃の人参・甘草・半夏・生姜による気血生化の源を滋補する薬物を加えると,温経補虚の効を発揮する。さらに,川芎・牡丹皮は桂枝の活血行瘀に協力し,牡丹皮は虚熱も清するので,これらによって袪瘀生新させると,唇口乾燥の症状が除かれ,虚熱を清することによって手掌の煩熱なども解消する。
 方中の桂枝・牡丹皮には良好な活血行瘀の作用があるが,桂枝の性は温であるから寒証に適し,牡丹皮の性は寒であるから熱証に適しており,両者を併用すれば活血作用が増強されるのと同時に,寒熱の偏りがなくなり相反相成の威力を発揮するので,仲景の方剤中に併用されていることが多い。本方においては,桂枝によって下寒を温め,牡丹皮によって浮熱を清し,寒熱併用が矛盾することなく両立するこの種の用薬方法は,熟考する価値がある。
 【応用】 本方は月経不順や月経痛に有効である。下腹部の冷痛が甚だしいときは小茴香・艾葉を加えて温経散寒の効能を増強し,月経時あるいは月経前に下腹部が脹痛するときは香附子・烏薬を加えて行気止痛し,淡色の子宮出血が続くときは牡丹皮を去り,炮姜・艾葉・熟地黄を加えて温経・補血・止血し,気虚が甚だしいときは黄耆を加えて益気する。
 【加減方】
 局方温経湯
 [成分] 桂枝・当帰・白芍・川芎・牡丹皮・人参・甘草・莪朮・牛膝。 
 [主治] 温経湯と同様であるが,温補の効能が弱く活血袪瘀の効能が強くなっているので,瘀滞が顕著なときに適している。

                            (陳潮祖)

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by m-kanpo | 2006-05-19 16:38 | 漢方処方